海賊襲撃が生んだ村〜セブ島バジャウ族の実話〜

バジャウ族の故郷であるフィリピンの海原は、時に静寂に包まれ、時に危険な闇に覆われる。

バジャウ族は海の人々として知られ、何世代にもわたってフィリピン周辺の海を漂いながら生活してきた。

彼らは海と共に生き、海と共に成長し、その生活様式は海そのものだ。

しかし、この穏やかな海にも恐怖の影が忍び寄る。

突然、波間に現れる不気味な船。海賊たちの襲撃だ。

「見ろ、あれは海賊船だ!」

「へっ、バジャウ族ごとき、俺たちの敵ではない。全て奪ってやる!」

映画やアニメのワンシーンのように感じるかもしれないが、これらの海賊は実在の脅威だ。

フィリピン周辺の海域では、昔から海賊たちが船を襲撃してきた。

中でもバジャウ族は、その生存のために多くの困難を乗り越えてきた。

植民地時代の影響で治安が悪化し、もと水夫や海兵崩れが徒党を組んで海賊化した。

海の人々であるバジャウ族にとって、海賊の存在は日常の一部となり、彼らへの生活にも多大な影響を及ぼしてきた。

そのうちの1つがセブ島バジャウ族の村だ。

歴史的背景

16世紀から19世紀

スペイン植民地時代

フィリピンは16世紀半ばから約300年間、スペインの植民地として統治されていた。
この期間中、フィリピン周辺の海域ではスペインの船舶や植民地を狙った海賊行為が頻発していた。

スールー海のモロ族:フィリピン南部のスールー海に住むモロ族(イスラム教徒の民族)は、海賊行為を行っていた。
彼らは、スペインの統治に対する抵抗の一環として、スペイン船を襲撃した。

モロ紛争(Moro conflict)[33]は、1969年から2019年まで[27]続いたフィリピンミンダナオ島での反乱。

19世紀から20世紀

アメリカ統治時代

1898年の米西戦争の結果、フィリピンはアメリカの統治下に入った。
この時期にも、特に南部では、海賊行為が続いた。
アメリカはこれを抑え込むための軍事行動を行ったが、完全な解決には至らなかった。

現代の海賊活動

現代におけるフィリピンの海賊活動は、以下の要因が影響している。

経済的要因

フィリピンの一部地域、特に南部のミンダナオ島やスールー諸島では、経済的な困窮が深刻だ。
貧困と失業が、海賊行為を生計の手段として選ぶ人々を増やしている。

政治的要因

特に南部地域では、中央政府の統治力が弱く、法の支配が及ばない地域がある。
これが、海賊行為が取り締まりを受けずに行われる一因となっている。
また、フィリピン南部では、反政府武装勢力が活動しており、一部は海賊行為を資金源としている。
例えば、アブ・サヤフというイスラム過激派組織は、海賊行為や誘拐を行い、身代金を要求することで資金を得ている。

セブ島バジャウ族の村の起源

セブ島にあるバジャウ族の村は、海賊襲撃によって生まれたと言っても過言ではない。
これは、今から50年以上前の出来事だ。
フィリピン南部のミンダナオ島に住むバジャウ族の2人が漁に出かけていた。
ところが、海賊に襲われ、エンジンとボートを奪われてしまったのだ。
ボートを失った彼らは、命からがら泳いでミンダナオ島の村に戻った。

この恐ろしい体験がきっかけで、バジャウ族はミンダナオ島での生活が危険だと感じ、住み慣れた故郷を離れる決断。
彼らはフィリピンの島々をボートで旅し、セブ島の海岸にたどり着き、そこで高床式の住居を構えた。
次第に他の島からもバジャウ族が集まり、コミュニティが形成された。
そして1972年に現在のバジャウ村が誕生し、村の開拓者が村長となった。

残念ながら、初代村長は数年前に亡くなり、今は次男であるアルコール中毒の「サニー」が村長を務めている。
ちなみに、初代村長の長男は村長になることを嫌がり、現在はレイテ島のバジャウ村に移り住んでいる。

セブ島に住むバジャウ族についてはこちら。
https://badjao-guesthouse-cebu.com/2024/07/14/blog001/

左が初代村長で、右が長男。右から2番目が次男で2代目村長だ。 

貴重映像〜ブブアンの海賊〜

1972年、今村昌平がフィリピンで撮ったバジャウ族に焦点を当てた作品。
バジャウ族の蔑まれている様や 優勢な立場の民族も政情不安の犠牲になってる現状が描かれている。

このYouTubeのコメント欄からフル動画(40分)が観れるので、ぜひみなさんにも50年以上前の貴重映像を見てみてほしい。

最後に

このように、バジャウ族の生活は海と共にあり、彼らは海賊という脅威と戦いながらも新たな生活の場を見つけ、コミュニティを築いてきた。

セブ島のバジャウ族の村は、その象徴的な存在だ。

バジャウゲストハウスでは、そんな彼らバジャウ族の文化を体験するツアーをご用意しているので、この記事を読んでくれたみなさんにはぜひ体験していただきたい。

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